YouTubeを活用したセガのコミュニティづくり〜ゲーム業界でも求められるロイヤル化戦略〜

株式会社セガ

Share

YouTubeデータ分析ツール『kamui tracker(カムイトラッカー)』の提供やYouTuberのキャスティング、チャンネル運用支援などを行うエビリー。今回、2020年11月から同社の『kamui tracker』を導入したゲーム会社セガに、YouTube活用の取り組みについて、その狙いと成果を聞いた。
(本記事は「月間宣伝会議9月号」に掲載された記事を許可を得て転載したものです)

若年層向け施策としての活用 スタジオ開設で社内活性化も

―セガではどのようにYouTubeを活用しているのでしょうか。

向:当社では約10年前から、ゲームのプロモーションビデオをストックしておく場所として、あるいは番組の生配信の場としてYouTubeを活用してきました。今までは台本を決めた、テレビ局の番組づくりに近い形で制作をしていて、費用と時間もかかっていましたが、社内スタッフだけで配信ができる、よりライトな制作スタイルも本格的に追加して、視聴者に気軽に見ていただけるよう工夫しています。

こうした戦略転換の背景には、2021年に会社方針として掲げたコミュニティ施策の強化があります。その一環として、2020年10月に始まったYouTube番組「セガの新番組」もリニューアル。4月には本格的な設備から、ライトな配信まで対応した社内動画撮影スタジオ「SOZOSTUDIO」の開設に加え、マーケティング本部にコミュニケーション推進部という部署を新設し、事業としてコミュニティ運営や動画活用が本格化しました。ユーザーからは、「こういう番組が欲しかったんだ!」というポジティブな反応をいただけています。

エビリー担当者:YouTubeには様々な活用方法がありますが、濃いファンをつくることができるのが強みのひとつ。インタラクティブなコミュニケーションを通しユーザーがどんなコンテンツを求めているかを研究していくと、しっかりファンもついていくと思います。

向:当社は比較的15年、20年と続いているようなコンテンツが多いので、ファンと開発者が一緒に歳をとっている状態で…「若い人たちには売れないよね」という感覚でいたのですが、それではいけないと。次世代のメイン購買層に向けて、主にZ世代に向けたタッチポイントを増やしたいというのも目的でした。

エビリー担当者:現場がインタラクティブなコミュニケーションの重要性を感じていても、会社として方針を定められていない場合もある。従来の広告だけでは効果が出づらくなっている今、YouTubeなど支持を得ているプラットフォームをどう使っていくかは考えていかなければいけないことだと思います。セガさんのように、自社でスタジオまでつくる企業はそこまで多くないかなと。

向:実はコロナ以前から計画していたのですが、完成がこのタイミングになりました。想定外だったのは、スタジオ自体が社内のコミュニケーションの場となったこと。異なるゲームのスタッフ同士が収録の時にたまたま会って、そこでコラボに発展することもありました。

KPI設定は施策ごと 開発者にも即フィードバック

―セガでは『kamui tracker』を導入しているそうですね。活用の状況はいかがでしょうか?

向:施策の企画から効果検証まで、YouTube上の機能だけで必要なデータを収集、分析し活用することは難しく、途方もない人的リソースがかかることから、動画活用のプロジェクトは『kamui tracker』ありきで進めています。データは見ようと思えばどこまでも見ることができる分、施策ごとに目的とKPIを決めることも重要です。例えばソニック30周年記念のインフルエンサー特化のゲーム実況コンテンツでは「ソニックを知らない人に向けて発信する」ことがテーマだったので、新規視聴数に重きを置きました。

エビリー担当者:自社でのチャンネル運用は成果を長期で見る必要があり、初めに目的をしっかり設定しておかないと、継続が難しくなることもあります。

向:たくさんトライを重ねてデータを蓄積し、検証することも重要です。5分くらいで考えた企画が30万再生されることもあるので(笑)。『kamui tracker』で得た一次データはゲーム開発担当にもフィードバックしています。ちなみに当社ではプロデューサーも宣伝担当も誰でも使えるようにしていて、インプットできる情報量は全員が同じレベルになるよう心がけています。

エビリー担当者:YouTube施策は属人性が高いものと思われがちです。私たちはクリエイティブの前提となるデータを網羅して提供することで、施策の再現性を高めるお手伝いをしています。例えば、ゲームタイトルごとに誰がオーガニックでゲーム実況をアップロードしてくれているかなどのデータも見ることができます。

向:そこでプレイ動画があまり投稿されていないようなら、具体的な投稿数の目標を設定したり、新たな施策の検討材料にもしています。

―マーケティング施策全体の投資を考えたとき、異なる施策同士の比較はしていますか。

向:当社ではしていません。Webのバナー広告とYouTube施策では目的やマーケティング上の役割が全く別物で、投資額とリターンなどで横並びに比較しても意味がない。各施策は独立したものとして、企画立案、効果分析をしています。

エビリー担当者:テレビCMやWeb広告との比較を求められることは多いですね。実際に数値面で比較することも可能で、例えばYouTuberタイアップの動画経由でLPに来た人は滞在時間が4倍になっていたり、直帰率が低くなっていたりという事例があります。動画を活用することで商品への興味関心度合いが高まるということがデータでも見え始めています。YouTubeはリーチを広げる使い方もできますが、やはり圧倒的な「深さ」に強みがあると思います。

―『kamui tracker』の活用において、今後期待していることは?

向:機能面では満足していますが、コミュニティやセミナーなどそれ以外の部分でも連携しています。他業界の事例を参考にすることもあるので、そうした取り組みももっと進んでいくといいですね。

エビリー担当者:これから動画活用を始めようという企業が多い中で、単にツールやデータを提供するだけでは不十分。「かむい塾」というセミナーなどでお客さまの声を聴き、より良い動画活用に向けた開発を進めています。今後は、動画制作から活用まで包括的にサポートできるツールも新たに開発予定。データに加え人の知見の部分でも支援を強化しており、タイアップ施策やチャンネル運用なども行っているので、まずはご相談いただければと思っています。

  • kamui trackerの試用版を体験!
    サービス・料金・事例に関する資料も配布中です。

    試用版を申し込む(法人向け) 資料ダウンロード