YouTuberタイアップの変遷と未来予測【美容編】
最終更新日 2023年7月14日
「YouTuberタイアップ」とは拡散力があるYouTuberに、動画を通して企業の商品やサービスの魅力を伝えてもらうプロモーションのことを言います。
以前「もう悩まない!最適なYouTuberタイアップ -選定と企画- 前編」の記事でもお伝えした通り、YouTuberタイアップを実施する企業が年々増えている分、競争が激しくなっています。単純に「タイアップすれば売れる、認知拡大する」ということが難しくなってきています。特に美容業界はD2Cの加速も相まって、商品数ブランド数が非常に増えてきており、さまざまな業界の中でも差別化が難しいとされています。
そこで今回は、美容カテゴリの過去5年分のYouTuberタイアップ市場調査データと近年の兆候から、今後のYouTuberタイアップの成功法則を予想します。2016年からYouTuberタイアップを実施し、現在年間200件以上のタイアップ実績をもつエビリーが導き出した、YouTuberタイアップの未来予測をお届けします。きっとYouTuberタイアップを実施する上で役に立つはずです。
また、YouTuberタイアップの企画を立てるポイントは「もう悩まない!最適なYouTuberタイアップ -選定と企画- 後編」の記事でも詳しく解説しておりますので、ぜひチェックしてみてください。
目次
1. YouTuberを活用した美容系商材PRの実情
1.1. 美容チャンネル全体の市場概況(企業数、商品数、クリエイター数)
1.2. PRが成功するコンテンツのキーは「信頼性」
2. これまでの美容タイアップトレンド/時代別解説
2.1. 事務所所属拡大期
2.2. ライブ配信者(VTuber)台頭期
2.3. 芸能人期
2.4. Shorts/切り抜き台頭期
2.5. Z世代受けYouTuber台頭期
3. 美容タイアップ市場の未来予測
3.1. 美容成分の解説が増える
3.2. TikTokで人気なコンテンツがYouTubeにさらに流入する
3.3. メンズコスメ商材のタイアップが増える
1. YouTuberを活用した美容系商材PRの実情
1.1. 美容チャンネル全体の市場概況(企業数、商品数、クリエイター数)
タイアップ件数が2016年から右肩上がりの増加となっていた美容業界では2022年、680社1,076 商品が YouTuber タイアップを行いました。
2016年と2022年で比べてみると、企業数はおよそ5.7倍、商品数はおよそ7.2倍の増加となっています。
近年企業のプロモーション手法として、YouTuberタイアップが徐々に定着してきているため、タイアップを行う企業数や商品数は2023年さらに増加することが予想されます。
美容(クリエイター数)
2022年は1,223組のYouTuberがタイアップ案件を行いました。
この数値は2016年と比べておよそ13.4倍となっています。
これからも美容系カテゴリのYouTuberが登場し、タイアップを行うYouTuberが増えていくでしょう。
1.2. PRが成功するコンテンツのキーは「信頼性」
視聴者に「認知拡大」だけでなく「購買」までしっかり検討させたい場合はYouTuberの「信頼性」がキーになります。
普段から色々なコスメを買い自分の肌に合うか試していたり、美容成分や正しいスキンケア・メイクの方法に詳しかったりと「自分磨き」を怠らない美容系YouTuberは視聴者からの信頼を獲得しやすく、コメントもポジティブなものが多い傾向がありました。
他にも信頼を獲得しているYouTuberは、商品の良い面だけを紹介せず、しっかりとデメリットも合わせて伝える特徴がありました。飾らないキャラクターで商品を本音で紹介するコンテンツでは、コメント内で「商品を買いたい」という声が多数見られました。
YouTuberの過去のタイアップ商材を考慮し、普段のイメージと商品が合うかどうかを検討した上で選定することで「信頼」を獲得できる動画になります。
2. これまでの美容タイアップトレンド/時代別解説
エビリーで独自調査を実施し、2016年から2022年のYouTube市場の変遷を年表にしました。
ここからは年代ごとに見られる美容カテゴリのYouTuberタイアップの特徴について解説します。
2.1. 事務所所属拡大期
2014年10月(対象:2016年1月)〜2019年6月
この時期には、YouTuberの事務所が設立され始め、登録者数を獲得しているYouTuberが続々と事務所に所属するようになりました。
2016年から2017年頃の美容カテゴリにおけるYouTuberタイアップの特徴としては、動画の構成が現在と比べてシンプルでレビュー系コンテンツが中心であったことや、今と比べて YouTuberの数がまだ少なく人気 YouTuberにタイアップ案件の依頼が集中していたことが挙げられます。
プチプラで購入できるものから高級な美容商材まで幅広い美容知識を持ったYouTuberにタイアップ案件数と視聴者の人気が集まりました。
2018年頃には、ルーティーンやVlog系のコンテンツが視聴回数を特に伸ばしました。特にナイトルーティーンの中で実際に、クレンジングや美容液などを使用するシーンを映すことで視聴者に使用イメージを持たせ、PR感を感じさせない自然な訴求ができている動画が人気でした。
また「縛りメイク」と呼ばれるコンテンツも流行し、メイク動画において使う商品を1つのコスメブランドなどに限定して、商品を紹介するYouTuberも現れました。
2.2. ライブ配信者(VTuber)台頭期
ライブ配信者台頭期:2017年3月〜2022年12月
VTuber台頭期:2016年12月〜2022年12月
2017年頃から、ライブ配信動画が多く登場し始めました。タイアップ案件数が多かった YouTuberは「ライブコマース式」の動画配信手法で生配信中に商品を紹介していました。ライブコマース式とは、生配信をする中で商品紹介と物販を組み合わせた販売手法のことを指します。ライブ配信なのでリアルタイムで視聴者と双方向のコミュニケーションが取れることが、視聴者の購買意欲を高めやすいというメリットとして挙げられます。
この手法は多くの企業に宣伝効果が見込まれ、ライブ配信とタイアップの相性の良さを示した例となりました。
また、VTuber自体は2016年12月から誕生したとされていますが、2022年はさまざまな業界でVTuberが活用されました。美容業界でもVTuberとタイアップ動画を配信する企業が増加し、企業とのコラボ商品が発売される動きも活発に見られました。熱心なファンが多く、高いエンゲージメントを持つVTuberの活用は、この先もYouTubeにおけるマーケティング成功のための大きな要素となるかもしれません。
※参照記事(2022年版!VTuberのバズるポイントは?最新トレンド調査)
一方で視聴者がついつい最後まで見たくなるASMR動画(※1)は2020年から2021年で特に人気になり、タイアップ動画の視聴回数上位TOP10のコンテンツのうち、6コンテンツがASMR系のコンテンツでした。美容系のASMR動画では、提供商品でメイクする様子のASMR動画などが見られました。
※1 ASMR動画:Autonomous Sensory Meridian Responseの略で、人が聴覚や視覚への刺激によって感じる、心地よい、脳がゾワゾワするといった反応・感覚を掻き立てる動画コンテンツ
2.3. 芸能人期
2019年7月〜2020年6月
2018年頃に芸能人のYouTube参入が目立ち、その翌年から飛躍的にチャンネル数が増加し始めました。同時にタイアップ投稿も徐々に増加しました。
一方で、普段から忖度せず本音ベースでコンテンツを配信しているYouTuberに多くのタイアップ案件が集まり、視聴回数を伸ばしました。視聴者からの信頼度を確実に獲得した一方で「この YouTuberとタイアップすれば売れやすい」という企業からの信頼があるYouTuberが固定されていきました。
この傾向から「本音レビュー」「ガチ検証」などのコンテンツが視聴者に強く刺さる傾向が強まりました。この期間では、よりコンテンツの多様性が広がりました。
単純なレビュー動画は、「メイク」「スキンケア」「新作購入品紹介」などのテーマ別に分類され、特化型のYouTuberが増加しました。
レビュー系企画は、以前「1動画で1商品の紹介」がセオリーでしたが、全色レビューや10色レビューなどの「1動画で多数の商品の紹介」をするコンテンツが登場しました。
また、日本の商品の紹介にとどまらず、韓国コスメの紹介企画が増加したことも特徴の一つです。
一方で、さりげない訴求ができるルーティン系の動画は「ナイトルーティン」や「モーニングルーティーン」などに細分化され、「GRWM(※2)」も海外から輸入されました。
※2 GRWM:Get Ready With Meの略で「私と一緒に準備をしよう」という意味。家での準備の様子を撮影したもので、日常的な準備や特別な日の準備の動画もある。
2020年1月頃からは、新型コロナウイルスの影響で「マスクメイク」「マスクでも崩れにくい」のような時代に合わせたコンテンツも登場し、人気を集めました。
2.4. Shorts/切り抜き台頭期
2021年1月〜2022年12月
この期間はショート動画や切り抜きが流行しました。タイアップ動画の視聴回数上位10件中7件の動画が、ショート動画でした。
この時期のコンテンツも芸能人期に引き続き、単純に商品を紹介するレビュー形式に新たなトレンドが加わりました。エンタメ要素が強い「笑えるコンテンツ」や、TikTokで流行している音楽に合わせてナレーションを入れて解説をする構成などがショート動画で人気の高いコンテンツとして定着しました。
また、視覚的なインパクトを短時間で与えやすいショート動画は、美容商材のタイアップ動画で伸びる特性のコンテンツ(メイク後のBefore、Afterなど)と相性が良いといえます。顔全体の印象の変化がわかりやすいメイク道具のPRやカラーシャンプーなどのPRは、端的に使用前後の変化を見せる事で、効果的に視聴者の関心度を高められる可能性が高まります。
2.5. Z世代受けYouTuber台頭期
2021年1月〜2022年12月
一見PR動画に見えない「自然な訴求」をするコンテンツがさらに多様化し、登録者100万人超えのYouTuberが、中学生とコラボした動画やドッキリを仕掛けられる動画などが特にZ世代から支持されました。またVlog企画や質問企画などに商品の紹介を入れる構成もみられました。
今までは女性 YouTuberが中心にタイアップ投稿を行っていましたが、この期間でカップル YouTuberのPR動画が増加し、幅広い世代に定着していきました。
また、アニメクリエイターとのタイアップや「比喩的訴求」(〇〇みたいな肌、〇〇が潰れない洗顔ブラシなど)が増加したこともこの時期の特徴だといえます。
そして、Z世代以外の視聴者には「専門性の高いコンテンツ」を投稿するYouTuberが支持され始めました。「若返り」「コンプレックスの改善」などひとつの分野に特化したテーマが安定した視聴回数を保っています。そんな中、医療従事者が美容成分を詳しく解説するケースも増え、説得力のあるコンテンツが人気になっています。
3. 美容タイアップ市場の未来予測
これまでの美容タイアップ市場の変遷と、直近のトレンドを踏まえてkamui trackerのマーケティングチームが導き出した、美容タイアップ市場の未来予測をご紹介します。
3.1.美容成分の解説が増える
YouTube上のタイアップ数が多かった企業を調査したところ、InstagramやTikTokの上位の企業と同じ企業のタグの投稿が多い傾向がありました。
また、それぞれの企業の各SNSでのPR手法は共通していましたが、Instagramでは美容部員や公式アンバサダーによる美容成分を詳細解説したPRが行われていました。
今後のタイアップコンテンツは従来までの汎用的な商品紹介にとどまらず、今注目されている美容成分(ビタミンC、レチノール、ナイアシンアミドなど)の内容を詳細に解説する専門性の高いコンテンツがさらに増える可能性が高いと考えられます。
これは、美容商材がどんどん登場する中で差別化を図るために「本当に効くのか?」ということを科学的にも訴求する必要があり「美容成分」で効果を伝えることで、納得感を深めたり信頼を獲得したりできる可能性が高いからです。また、情報を正しく精査し本当に効く美容商材を買いたいと考えるZ世代の考え方にもマッチしていると考えられます。
これからのYouTubeの企画の方向性としては、例えばメーカーの担当者がタイアップ先のYouTuberに成分を講義する内容や、成分を解説するYouTuber同士のプレゼンバトルなどの「美容成分×商品訴求」ができる企画はタイアップ案件と相性が良いでしょう。
3.2.TikTokで人気なコンテンツがYouTubeにさらに流入する
YouTubeショートを使ったタイアップがかなり増え人気になっていることから、TikTokで人気のタイアップコンテンツの流入がさらに増加することが予想されます。
2022年10月から2023年1月のYouTube上の美容タイアップ数が多かった企業を調査したところ、上位にはスキンケアや、香水などの商材がランクインしていました。一方で、TikTokでは韓国のスキンケア商材や、脱毛機器の投稿が視聴回数が多い傾向がありました。また共通項として、美容外科のPRはYouTubeのタイアップ数とTikTokのタグ数で共に上位に入っていました。
現段階では、YouTubeとTikTokのタイアップ傾向は全く同じとはいえませんが、TikTokでのタイアップが成功しYouTubeのショート動画で同様のタイアップを行う企業も増えてくるでしょう。また、逆のパターンも考えられます。
そして、ショート動画を用いるタイアップ動画はそのままTikTokのコンテンツに流用できるので、この2つの媒体の結びつきは YouTubeショートが収益化された今、さらに強くなっていくと予想されます。
そのためYouTubeでショートを活用する場合には、TikTokでのトレンドをチェックすることがおすすめです。
3.3. メンズコスメ商材のタイアップが増える
2021年以降、メンズメイクに特化した美容系のチャンネルだけでなく、カップルYouTuberや男女グループの YouTuberがメンズコスメ系の商材のタイアップを行っています。
このように2021年から2022年は特にメンズコスメ商材のタイアップが増加した年でしたが、今後もさらにメンズコスメが一般化し、タイアップ案件数が増加すると考えられます。
2.3.で述べた通り、2018年〜2020年頃に特に活発に韓国文化が日本に伝わりました。
音楽や映画・ドラマなどを通してメイクの文化がYouTubeにも輸入されました。
この影響を受けたのは女性だけではなく、男性も憧れのK-POPアイドルのメイクを真似する人や、男性のメイクへの抵抗感が薄れる人が徐々に増え、2021年〜2022年頃にはZ世代を中心にメンズコスメが普及してきました。
また、大手化粧品メーカーがZ世代を対象とした「オンライン体験イベント」も開催したり、メンズコスメのTVCMを大々的に打ったりする事例もあり、このようなことからも国内のメンズコスメ市場の拡大の動きが見られます。
図9の通り、男性向けのコスメ用品の市場規模はこの15年間で約1.4倍に拡大していることからも、メンズコスメ商材のタイアップは、さらなる広がりを見せそうです。
例えば、女性向けアイテムのみをラインナップしていたブランドが、男性向けアイテムを積極的に取り扱うようになり、メンズコスメブランドとして新規に立ち上がったブランドも増加しています。
また、この数年でオンラインショッピングがさらに発達し、足を運ばなくてもメイクやスキンケア用品を手軽に買いやすい環境になったこともメンズコスメが定着している原因になっていると考えられます。
4. まとめ
2016年から2022年の美容系タイアップの歴史と、これからの未来予想について解説しました。
視聴者に商品の購買をしっかり検討させたい場合、「信頼性」が高いYouTuberに依頼することでタイアップ案件の成功確率が高まります。この信頼性は、美容成分や正しいスキンケア・メイクの方法に詳しい知識のあるかどうかだけでなく、商品のメリットとデメリットを忖度なく伝えることができているかも関係してきます。
これからは美容商材やそれに関する情報が溢れる中で、より一層「信頼性」が担保される美容成分の解説が含まれるようなコンテンツが好まれていくと考えられます。
また社会全体として「タイパ」が重視されていることで、ショート動画が好まれ、TikTokで流行っているコンテンツが YouTubeショート動画にさらに流入されるでしょう。
また、メンズのメイクや身だしなみへの意識がより浸透することでメンズコスメのタイアップも増加することが予想されます。
上記のどのコンテンツであっても、タイアップの基礎となる「熱量の高いファンがいるか」「自然な訴求ができているか」「動画の内容に信頼性があるか」ということは常に意識をしてYouTuberタイアップを行い、施策の成功確率を高めていきましょう。
5. 調査概要
調査期間
2016年1月1日~2023年1月31日の間に投稿された動画
調査方法
- kamui trackerの「商品動画検索」機能にて抽出された動画を下記の条件で調査
- 調査時期:2020年10月1日~2023年1月31日の間に投稿された動画
- 業種:美容・化粧品
- 視聴評価(※3):2.0〜50.0倍(投稿後30日間)
- 並び:視聴回数が多い順
- ※3 視聴評価:対象動画の視聴回数をkamui trackerが算出するそのチャンネルの動画1本あたりの推定視聴回数で割った数値(倍率)
- kamui trackerの「商品動画検索」機能にて抽出された動画を下記の時期・条件で調査
- 事務所所属拡大期:2016年1月〜2019年6月
- ライブ配信者台頭期:2017年3月〜2022年12月
- VTuber台頭期:2016年12月〜2022年12月
- 芸能人期:2018年9月〜2020年6月
- Shorts/切り抜き台頭期:2021年1月〜2022年12月
- Z世代受けYouTuber台頭期:2021年1月〜2022年12月
- 業種:美容・化粧品
▼合わせて読みたい美容カテゴリ関連の記事はこちら▼
本記事が皆様のYouTubeチャンネルの効果的な運用やYouTube施策において、少しでもお役に立てる記事となっていれば幸いです。
私たちエビリーは、kamui trackerを活用してデータドリブンなYouTuberキャスティングのサポートをしています。
ご興味のある方は、下記のボタンよりお気軽にお問い合わせください。